秋が少し急ぎ足で冬に向かい始めた朝。
彼女が外へ出ると、木の葉が霜の宝石を身に着けて、
きらきらと輝いておりました。
そして、ちょうど彼女の視線が向かう枝に
ちょっと恥ずかしそうに静かに光る、銀色の指輪がありました。
昨日あのひとの家に彼女が忘れた白いリボン
そのリボンで結ばれた銀色の指輪。
うっかりしたら気がつかない、静かに光るちいさな指輪。
これはあのひとが?
これは特別な贈り物なの?
これってほんとうのこと?
それともわたしはまだ夢の中?
これには大きな意味なんてなくて、すべてわたしの勘違いなのかしら。
彼女の胸は激しいリズムで鳴り響き、頭はぎゅっとしめつけられたよう。
息は白く、寒いはずなのに
からだは熱く、熱く、熱く。
ふと視線をあげるとそこには
少し離れたところに立つ
そのひとの姿がありました。
帽子を深くかぶって
寒そうにポケットに手をいれて立つそのひとは
彼女と目が合うと、恥ずかしそうに笑ってこう言いました。
「もしそれを受け取ってくれるなら、
あたたかい珈琲を飲ませてくれませんか」
女の子の顔は輝き、頭の中は真っ白になって、大きな声で答えました。
「はい。ずっと、ずっと、毎朝、
あなたのためにあたたかい珈琲をいれさせてください。」
彼女にとってそれははじめての
静かに光る銀色の
約束という贈り物でした。