時は少しさかのぼります。
そこそこ町の花のあふれるお屋敷に、花のような姉妹がおりました。
ふたりはいつも同じ服を着て、同じ花を愛し、
音楽を奏でるようにおしゃべりを楽しみました。
ある年の冬
ふたりに大きな嵐が襲いかかりました。
それまで真綿にくるまれて暮らしていたようなふたりは
その衝撃にとても驚き、闇におびえ、押し寄せた悲しみにうちのめされました。
ふたりはよりそって倒れないようにしているのがせいいっぱいでした。
長くて暗い冬の夜
ふたりは自分を、ふたりを、まわりのすべてを
はじめてしっかり見つめました。
そして少しずつまわりが見えてきたふたりには、
ひとりずつで考える時間が増えたのです。
そして訪れたうす緑色の朝。
ふたりは穏やかに見つめあい、しっかりと握手をしました。
彼女は扉を開けることを、
彼女は窓を守ることを、
決意したのです。
ふたりの視線の先には、違う景色がひろがりました。
それでもふたりは知っていました。
ふたりはずっと一緒に歩いていくのだと。
目にうつる景色は違っていても、
ふたりはいつも手をつないで歩いているということを。
決してひとりになることはないのだと。
美しい春のはじまりの日
彼女たちの人生が始まりました。
(そうしていくつもの季節が過ぎて、ある日、かわり種の森の女の子と彼女たちは出会うのでした。)