サーカスにすごい新人が入ってきました。
「僕はこわいことなんて何もないよ。猛獣だって大丈夫。高いところだってなんでもないさ。
なんでも僕にいいつけておくれ。」
皆が「はて。このタイプか。どうしたものかね。」
とこっそり思っていると、
ライオン氏が言いました。
「ようこそ、サーカスへ。ぼくらはきみを歓迎するよ。
サーカスに入ってくる見習いさんは、まずはサーカスの雑用をしながら、何が合うかを団長ほか先輩たちがじっくり観察して決めることになっていました。
この新人さんは、宣言の通り、くるくるぴょんぴょんととびまわり、高い高い綱渡りのロープの点検などもへっちゃら
危ない道具の手入れなども器用にどんどんこなし、獰猛な先輩?たちの身の回りのことなどもお手の物
「たいした器だよ、私のアシスタントに入ってほしいね」
みんなが希望する、納得の逸材でした。
新人さんは、一番高い柱の上に腰掛けて、サーカス全体を見ているのが好きでした。
舞台の上では先輩たちが練習中。
色とりどりのボールやクラブ、スティックが空中に舞っています。
ぼくならこの高さでもできるのにな。
あれ、うまく投げられないな、よ、は、よ、
あ、しまった
落ちそうな をとろうとした時にバランスを崩してまっさかさま。
ぼくがまさか!
ガシャン、床に打ち付けられたガラスのクラブは、こなごなになりました。
「誰もいなかったらどうなったと思うんだ!」
ごめんなさい、ごめんなさい。
壊れた クラブのかけらがキラキラと光っています。
この美しい ガラスのクラブは、ジャグラーの宝だったことを
新人さんも知っていました。
「どうぞおろしてください、片付けないといけません。」
涙がぽろぽろこぼれます。
「はだしじゃないか。女の子の足がガラスで怪我したら大変だ。僕が片付けるから、君は顔を洗っておいで」
はじめての失敗、割れたガラス、胸を射抜いた言葉と笑顔
涙と頬のほてりを沈めるために、
新人さんは冷たい水で何度も何度も顔を洗いました。
番外編